時は金なり。タイム・イズ・マネーというと拝金主義のように勘違いしているかもしれない。はっきりしておこう。間違っている。ベンジャミン・フランクリンが語りたかったことは、そんなみみっちいことではない。
時間を浪費するな
ベンジャミン・フランクリンは、この世の中で一番貴重なものは、時間であると説いた。
あれ?お金じゃないの?
それよりも大切なことだよ
著書「若き商人への手紙(Advice to a young trademan)」の中でこう詳細が綴られている。
一日働けば十シリング稼げる者が、半日歩いたり、家の中で何もせず怠けていたりしたら、その気晴らしや怠惰に六ペンスしか使わなかったとしても、それだけが支払われたと計算してはいけません。本当は、その他に五シリングのお金を使った、というよりむしろ捨てたということになるのです。
若き商人への手紙 ハイブロー武蔵 総合法令 p9
時間を無駄にすることに対して、人一倍ガマンがならなかった。というのも同書の第二部でも時間の浪費に対して警告を発している箇所がちらほらと。
時間こそが、この世の中で一番貴重なものであるならば、プア・リチャードが言うように、
同書 第二部 富への道 プア・リチャードの教え p24-25
「時間の浪費が一番の贅沢」であり、(中略)
「時間のなくし物は、二度と戻っては来ない」のです。
プア・リチャード?
ベンジャミン・フランクリン自身だよ
若い時に学んだ教訓を暦ごとにまとめたプア・リチャード暦から来ているんだ
日めくりカレンダーに暑苦しい迷言がのっている、まいにち修〇みたいなもの?
たとえが乱暴だな・・・
お金は信用作り
時間の浪費に目を光らせていたのは、成功したければ勤勉と節約に徹せよ!との信念から来ている。ここで、勤勉や節約ってなにを指しているの?と思ったあなた、いいセンスをもっています。
ベンジャミン・フランクリンは貧しい幼少期をえて、持ち前の根気強さで這い上がってきた、つわものです。いつも忘れずに心の支えにしてきた教えがある。それこそが、十三の徳。長いですがどうかおつきあいを。
一、節制 頭や体が鈍くなるほど食べないこと。はめをはずすほどお酒を飲まないこと。
同書 第三部 訳者解説 p54-55
二、沈黙 他人あるいは自分に利益にならないことは話さないこと。よけいな無駄話はしないこと。
三、規律 自分の持ち物はすべて置き場所を決めておくこと。仕事はそれぞれ時間を決めて行うこと。
四、決断 なすべきことをやろうと決心すること。決心したことは、必ずやり遂げること。
五、節約 他人や自分に役立つことにみにお金を使うこと。すなわち、無駄遣いはしないこと。
六、勤勉 時間を無駄にしないこと。いつも有益なことに時間を使うこと。
無益な行動はすべてやめること。
七、誠実 だまして人に害を与えないこと。清く正しく思考すること。
口にする言葉も、また同じ。
八、正義 不正なことを行い、あるいは、自分の義務であることをやらないで、
他人に損害を与えないこと。
九、中庸 何事も極端でないこと。たとえ相手に不正を受け、激怒するに値すると思っても
がまんしたほうがよいときはがまんすること。
十、清潔 身体、衣服、住居を不潔にしないこと。
十一、冷静 つまらないこと、ありがちな事故、避けられない事故などに心を取り乱さないこと。
十二、純潔 性的営みは、健康のためか、子供をつくるためのみにすること。性におぼれ、
なまけものになったり、自分や他人の平和な生活を乱したり、信用をなくしたりしないこと。
十三、謙譲 イエスとソクラテスを見習うこと。
五・六番目が勤勉と節約について述べているものです。両者とも共通しているのは、無駄遣いをするな。なんだか息が詰まりそうな・・・。
こうなると息抜きはどう考えていたのか。ベンジャミン・フランクリンはこう説きます。
「余暇が欲しいというなら時間を上手に使って作ること」
同書 第二部 p29より抜粋
「一分だって時間を容易に得られないのだから、一時間もの時間を無駄に使わないこと」
「余暇の生活と、だらけて何もしない生活とは違うのだ」
こうストイックだと、若いころに苦い経験かありそうだな。
そういう下衆の勘繰りはよせ!
若き日のフランクリンの失敗
勤勉と節制の両輪で、人生をそしてアメリカの基礎を築いてきたフランクリン。そんな彼も若き日にあるしくじりを犯している。
フランクリンが15歳のときの話。兄の友達(ヴァーノン)から35ポンドを預かった。
外国に送金するまでの間、預けておくといって支払命令書とともに渡されたんだ
フィラデルフィアで職探しをしていたフランクリンは、友人のコリンズと行動を共にしていた
・・・のだが、当のコリンズは賭博おかげで財布の中身はすっからぴん。つまり、からっぽ
さっそく雲行きがあやしい・・・
職を見つけたら返すといいつつお金を借りるコリンズ
そのお金って、預り金?
そうだね
ある日、知り合いの船長から相談を受けるフランクリン
どうやら、息子に家庭教師をつけたいとの頼み事だった
そしたらなぜか、コリンズが引き受けた
なぜ!?
手間賃としてお金を借りたコリンズ
また!?
「探してくるよ」の言葉と共に彼は・・・
まさか!?
消息を絶ちました
えぇーーーーーーー
その後、どうなったの?
預り金は、フランクリンの稼ぎでなんとか返済
家庭教師は知り合いの伝手を頼って見事解決
友好関係が広いんだね
安易に人を信じた若き日のフランクリン
でもそれから逃げなかったのは立派。大物の貫禄が出ていたね
まとめ
時は金なりの真意は、無駄遣いをするな・有限な時間をもてあそんでいる暇はないぞ!と厳しくもやさしい激励(?)なのでした。
勤勉と節約ってなにもビジネスだけでなく、人生観としても優れているよね
さぁ、無駄な時間を過ごしているひまはないぞ!!!
これを読んでいた時間が、無駄だと思われませんように!
それはないぜ~
<参考文献>
若き商人への手紙 ベンジャミン・フランクリン 訳)ハイブロー武蔵 総合法令
フランクリン自伝 ベンジャミン・フランクリン 訳)松本慎一・西川正身 岩波文庫