「読者のこころを動かすには、物語(ストーリー)が大事」
そんな話を聞いたことがないでしょうか。
企業の商品説明や街頭広告、TiktokやTread、xなどのSNSで日々流れてくる物語。日常にとけこんでいる物語の存在。私たちは、おもしろがったり、悩んでみたり、怒りを覚えたり、時には涙をながしてみたりする。
でもなんでそれが、ドラッグなのか。
ハツカやパイナップルの味がするものだっけ?
違う!それ、ドロップ
物語はドラックである所以
大学教授でもあるジョナサン・ゴットシャルは著書「The Story Paradox~ストーリが世界を滅ぼす~」の中で、物語は読み手自身の「自我を完全に消し去る」という現象をおこし、それはドラッグに近いと警告する。
(上略)物語は私たちが文字通り脳の化学反応を変えるために「服用する」ものである。他のドラッグと同様に、私たちは苦痛や孤独や単調な苦役をやわらげるために物語を使う。そして、他のドラックとまったく同じように、物語は催眠状態、あるいは麻薬によるトリップにさえ匹敵する意識状態へと私たちを誘う。
上掲書 p61
そして、物語の世界に飛ばされると、心は空っぽ・意識が静まり、時間だけが過ぎていく。物語の中に有効成分(著者定義)の筋書き・テーマ・登場人物・スタイルなどが程よく混ぜ合わされると、なお一層、脳に刺激が加わるという。
いい本の読後感が気持ちがいいのはドラッグなの?
善人VS悪人
特に、SNSなどで拡散される「加工された」物語は、強大な敵(官僚機構・世界銀行・ユダヤ資本など)が迫ってきているのに、周りは気付かない。この事実に気付いているのは、主人公であるあなた(読み手)だけ。
一見すると、何の陰謀論だろうかと思ってしまうが、この善人VS悪人の構造は、読み手のこころをつかんで離さない。
2000年初頭、ジョゼフ・キャロル、ジョン・ジョンソン、ダン・クルーガーらは、ヴィクトリア朝の小説を解析調査した。その結果、1世紀以上離れた時代にもかかわらず、善人(主人公と」その仲間)と悪人(敵役とその仲間)の対立があらわれた。大多数が、「主人公は協力して公益を目指して努力し、敵役は利己的な目的のために支配を企む。(上掲書 p160)」傾向がはっきりした。これを拮抗関係の構造(agonistic atrucuture)と名付けた。
なぜ悪人を求めるのか
人類学者クリストファー・ボームの研究によると、狩猟採集民族の生活環境にあるという。共同体と平等主義だ。
長く共同体を続けていくにはどうするか。自分勝手なことはせず、よい人間になること。集団で暮らしていくには我慢が必要となり、「自分の個人的な利益と集団のニーズのバランスを適正にとっている (上掲書p162)」状態であり、悪い人間は、「集団の利益より自分の利益を必ず優先する協調性のない(上掲書p162)」やつらとなる。
独り占めするような奴だな
われわれはこうだ!物語は集団をつくる
常に悪をたたく物語は、なぜうまれたのか。
1947年に写真家ナット・ファーブマンがライフ誌に掲載した写真がある。コサイン族の長老を中心にして、部族の子供たちが取り囲むように座っている。その写真は「語り部(ストーリーテラー)」と名付けられた。
著者はこう推察する。
私たちは物語を通して最も多く、最もよく学ぶ。突き詰めれば、これこそが物語の目的だ。つまり、私たちの心をつかみ、教えを授け、世界との付き合い方に影響を与えることだ。
上掲書 p45
道徳観や人生観を、まとまった人数で日々教えられる。こういった集まりが次第に、社会の基盤をつくりだす集団へとかわる。
何らかの教えを受けたまとまりを集団というのかな
物語は架空の相手に感情移入させる
偏見を和らげる効果
物語は対立を描くことが多いためか、毒としてのドラッグが目立つ。反対に薬としてのドラッグの効果もあるというと驚かれるかもしれない。偏見を和らげる作用がある。
1994年4月、ルワンダのフツ族がツチ族を虐殺した。ナイフやドライバー、釘付きのこん棒などで80万人を血染めにした。
約10年後、ルワンダとオランダNGOの共同によってある実験が行われた。New Dawn(新しい夜明け)というラジオドラマをルワンダの人々に聴かせた。血の抗争や古いしきたりに悩みながらも、お互いに愛を育む若い男女の恋愛ドラマだ。テーマは、ルワンダ版ロミオとジュリエット。
視聴後、お互いに感想を言い合った。その結果、部族間の結婚に賛同したり、他民族への信頼度の高まり、暴力よりも対話を支持する割合が増えた。
悲劇というと、ロミオとジュリエットだね
毒を以て毒を制す
さらにいうと強力なテーマを含んだ物語は、社会に対しても呼びかけを行える。
the story paradoxには載っていない話
かつて、14歳の母というドラマがあった。あらすじは、若い少女と少年と恋に落ちる。ある日、少女のおなかには、あたらしい命が宿っていることがわかる。しかし、ある壁があった。まだ二人は未成年14歳と15歳であったのだ。
未成年であっても、子供を産むことを許せますか。
14歳の母に込められた問いかけは、日ごろ、社会問題に興味を示さない人たちにも反響を呼んだ。
共感?
そうともいえるね。共感の話も興味深いので、改めて取り上げます
物語は諸刃の剣である
物語は強力な毒かもしれない。でも簡単には切り捨てられない
例えば、包丁
食材を切ったり、刻んだり、切り分けたりするのに便利だよね。料理をつくるうえで必要不可欠なもの
一方で、ひとに向ければとんでもない。一瞬で危険な凶器へと変わってしまう
だったら禁止にすればいいの?そういうわけにもいかない
包丁が便利器具になったり、凶器になるのも使う人次第
血まみれの現場よりも、愛情あるおいしい料理を振舞われたいよね
・・・主(あるじ)さん
四郎君?なんだい?
私のごはんがいつも缶詰なのは、なぜなんだい?
コメントは控えさせていただきます
まとめ
- 物語は、読む人自身を消し去り催眠状態をつくる
- 物語は、善人と悪人の構造をもとめる
- 物語は、よい人間と悪い人間に分けたがる
- 物語は、それぞれ集団を生み出す
- 物語は、偏見を和らげる効果もある
- 物語は、社会に対し疑問を問いかける力もある
物語は薬にも毒にもなる。ゆえにドラッグ。
だからこそ、コピーライティングに活用する際には、細心の注意を払ってほしい。目指すは、読み手(お客さん)のことを思いやり、いい人生の一歩に導いてあげること。
今回の記事で、いい面・悪い面を知ったあなたならきっと間違わないはず。信じています。
これもまた、善人・悪人パターン?
さーて、そうでしょうか
あやしい!!!
さっぱり、頼りにならない飼い主でした。
ナレーターにもバカにされた!!
ライティング技術は、読むひとはもちろんのこと、書くひとさえ魅了してしまう。だからこそ、使い道を誤らないでほしい。あなたが目指すべきは、お客さんとの良好な関係を築くことであって、一方的に丸め込むことではない。お互いに気持ちよく過ごせる環境を差し出せる。そういったこころをみせてほしい。
それが叶ったのならば、大いに時間やお金に不自由ない生活を楽しんでください。守りたいもの・守るべきひと・守ってゆかなければならない文化や歴史、故郷。あなたが成し遂げたい夢への懸け橋の手助けになったのならば、幸いです。
長文、失礼!