君は稀代のルポライター竹中労(たけなか・ろう)を知っているか?反骨心が描く読者の心に訴える文章を見よ!

rou-takenaka-rupowriter ライティング(文章)の魅力・実力・魔力

ルポライターが書く文章とコピーライティングを柱とした文章では、向かっている方向が違う。そう思えても仕方がない。ところがだ。実は我々が学ぶことは多い。文章の向こう側には、読者がいる。その読者に対してどう訴えかけるのか。どんな言葉を選べばいいのか。その思考過程はけっして疎かにはできない。今回、竹中労の文章からプロの極意を学んでいこう。

竹中労とは何者か?

1930年東京都生まれ。1991年に没するまで活動は多岐にわたる。

ゴシップを主体とした暴露記事を得意とし、多くの芸能雑誌に執筆。暴露記事のみならず、演歌史を学ぶものなら一度は目を通す「美空ひばり 民衆の心をうたって二十年」や、当時無名の音楽バンドから社会構造に切り込んだ話題作「たまの本」などの芸能社会史も執筆。

かと思えば、五木寛之氏原作の「戒厳令の夜」を映画化。その他、「アジア懺悔行」「さんや’68・冬」など多数の映像作品を発表。

さらには、当時の言論問題に対抗する形で、公序良俗からはじかれた唄を集めた「日本禁歌集」まで発表する。まさにマグマのような創作意欲。それでも、竹中労は、自らを根無し草・三文記者と呼び、ぶれない個人としてルポライターとして歩んだ。

スキャンダリズムとはなにか?

スキャンダリズムというと、他人の弱みを握り、あることないこと書き立てる質の低いやり口とおもわれるかもしれない。竹中労は頑固として反対する。そういうものは「愛情がない」と。

くちはばったいが、私は週刊誌のライターとして゛読者大衆”の支持を得てきた。それは、スキャンダリズムをとことん徹底してきたからである。低俗・卑俗とおとしめられる芸能のゴシップから一点突破して、人間と社会の矛盾をあばく作業を、スキャンダリズムというのである。

決定版ルポライター事始 p23 ルポライターの履歴書 より

1980年当時、渡辺プロダクションにはあるうわさが立っていた。裏にあやしい影がみえる。竹中労は、徹底した取材で見事突き当てた。なんと、音楽事業者協会の会長に自民党の風見鶏・中曽根康弘がいた!

竹中労は語る。「そのようなバクロに、大衆は敏感に反応するのである」

ネコジャラシ四郎
ネコジャラシ四郎

自民党の風見鶏・・・なかなか過激な言葉だね

対象は企業・既得権益団体。ただし、あくまでも大衆目線

なぜルポライターの職に固執しているのか?

記事一つ通らなければ、極貧まっしぐらの不安定な職業。だが竹中労は、生涯を通じて(命をかけて?)やり遂げた。そんな男の流儀とは何なのか?

ルポライターとは何か?なぜ、この職業をえらび、この職業に固執するのか?結論はそろそろ出たようである。この書物を私は遺書とはいわぬまでもおのれの半生を総括するために記述している。それはお前の生きかただ、他人に押しつけるいわれはないという批判があるだろう。押し付けるのではない、「私はこんなふうに生きてきた、君はどうだ?」と問うているのである。

上掲書 p119-120 刑法改正と゛自由な言論”より

単なる仕事ではない。生き様である。迫真にせまる文章も、現代に未来に生きる私たちに向けたメッセージといえる。

飼い主
飼い主

竹中版・君たちはどう生きるか

文章は、書かれた生き字引

表現の自由を語るならエロを守れ!?

表現の自由を守れ!

そう叫ぶ方は多い。そうした中で大真面目に、エロを忘れていやしないかと叫ぶものは少ない。

1970年代後半、国は流通における図書の健全化を掲げた。その一端だったのだろうか。風俗ライターで同性愛を描いた作品「ホモビアン」を発表していた大満義一。その彼が家宅捜査を受けたのだ。竹中労は憤った!

国家権力が容易に突きくずすことのできる言論表現の最も弱い環を、弱い環であるがゆえにボクたちは死守しなくてはならぬ。そのパラドックスがわからぬものには、人間の自由を語る資格はない。変態ポルノのセールスマンとして、「法と秩序」は大満義一を裁き、その魔女狩りは、性を主題とするすべての文章・映像・音声の領域に拡大していくだろう。そして干渉は、戦前の検閲制度の復活といった〔権威主義的文化思想・風俗統制〕への道をくりかえさないであろう。

上掲書 p158 「価値なき自由」を守ること

「世の中の流れは変わった」といって安易に表現の自由を捨て去るぐらいなら、竹中労が語るように「人間の自由を語る資格はない」といっていい。

たとえ逆風を浴びようとも、反対の姿勢を貫けるかどうか、これこそ竹中労が訴えたかった反骨心なのではないか。

一貫してぶれない信念

まとめ

ルポライター竹中労が読者の心に対して訴える文章のポイントは、

  1. 対象は、企業・既得権益団体。ただし、あくまでも大衆目線
  2. 文章は書かれた生き字引
  3. 一貫してぶれない信念

ポイントからこう読み替えてもいい。1の対象は、あなたが制したい市場・目線はあなたが求めるお客さん。2の生き字引は、なぜ商品を売りたいかの理由。3の信念は、あなたが持っている情熱や想い・伝えていきたいメッセージなどの理念。

日々の集客・接客を通して、まずもって訴えるべきは、あなたの理念や情熱。

お金だけのやり取りでは、その時限りのつながりです。理念や情熱に共感してくれたときのつながりは、何事にも代えられないものです。

商品を売るだけでなく、ぜひ理念や情熱を通して、相手の心に届けてあげてください。

本当の意味でのお客さんをぜひ見つけ出しませんか。

むすびに、今回の主役・そして人生の先輩でもある竹中労氏の言葉をもって代えさせていただきます。

職業とは生活の手段である。だがそれは同時に(それ以上に)、人がおのれの望みをいかに生きるかという試練の場なのである。(中略)人は職業をえらび、職業は人を選択するのである。

決定版ルポライター事始 p120 刑法改正と゛自由な言論”より

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<参考文献>
決定版ルポライター事始 竹中労 ちくま文庫